バンドの楽器の中で一番人気はギター、ベースは不人気の代表、と思い込んでたんですが、どうやら時代は変わりつつあるようです。
昔は「じゃんけんで負けた人がなる」ってくらい冷遇されてたベースが、いかにして人気パートに躍り出たのか?
その理由を自分なりに考察してみました。
バンドするとき楽器で人気があるのは?
「バンドやるならなんの楽器がいい?」
という投稿クチコミ記事をアメブロでみつけました。
投票数 1038名のアンケート結果は
出典:http://kuchikomi.ameba.jp/pub/entries/neta-11860
・2位.ボーカル / 23.7%
・3位.ベース / 17.6%(同率)
・4位.ドラム / 17.6%(同率)
・5位.ギター / 17.5%
何と、0.1%の差ですがベースがギターを抑え堂々3位にランクイン。
回答者の年齢層がどのあたりに集まっていたのかはわかりませんが、これははっきり言ってボクの若い頃では考えられなかった事。
信じられません。快挙です。
ベースはじゃんけんで負けた奴がする楽器と言われてた時代
その昔、ベースは虐げられた存在でした。
- 影で囁かれるベース不要論
- ギターを目立たせるための比較要員
- バンドという体をなすためだけの存在価値
「へ~バンド組んでるんだ。で、何の楽器やってるの?」
この会話の流れが怖い。
そう、悲しきベース暗黒時代だったんです。
ベース暗黒時代
1970年代後半、おりしもバンドブーム到来。
巷では色気づいた若者達がこぞって楽器を始めました。
「演奏がしたい」というより「バンドがしたい」、もっと言えば「モテたい」というヨコシマな考えを持った者が大多数いたような気がします。
そのため、バンドを組もうとしても ほとんどが見栄えのするギター希望者ばかり。
メンバーがかたよりすぎてバンドにならない、なんて事は日常茶飯事。それもそのはず、そこには目に見えないヒエラルキーのようなものが存在していたからです。
当然話し合いで折り合いがつくはずもなく、すったもんだの末、ジャンケンに負けて無理やりベースにさせられるという悲劇が後を絶ちませんでした。
勝負に勝った者は晴れてバンド内での花形ポジションを獲得し、眩いばかりのスポットライトと黄色い歓声を浴びながら、これから訪れるであろう華やかなバンドライフを夢見み 両手をつきあげ歓喜する。
片や負けた者は、今後決してスポットライトを浴びる事は許されず、ステージの片隅で黙々と演奏する自分の姿を想像し目の前が真っ暗になる。
そしてまるで不当な冤罪判決を言い渡された被告のように、絶望し泣きわめきながら膝から崩れ落ちるのでした。
「主文、被告を無期ベースの刑に処す。今後、舞台後方で延々と8分音符のみを弾き続けることを命じる。」
「ま、待ってください裁判長! 俺は、お、俺は何も悪い事なんかしてない! 目立ちたいなんて これっぽっちも思っちゃいない!
ただ、ただギターが弾きたかっただけなんだ! 本当なんだよ! だからベースだけは、ベースの刑だけは勘弁してくれ!! 」
「音量は控えめにするように。 ではこれにて閉廷します。」
「ままま、待ってくれ! 聞いてくれ! 違うんだ! だから、、!!」
「静粛に!被告人、退場を命じます!」
「お俺は本当に! 本当にーーーーー!!」
ドラム警備員とキーボード警備員に両脇を抱えられながら引きずられるように法廷を後にする。
「まじめにやってればいつかきっと良い事もあるさ。」
とボーカル刑事がそっと背中に言葉を投げかける。
ーーー完ーーー
・・・とまあ、そんな虐げられた時代だったわけです。
なので冒頭のアンケート結果は にわかには信じがたいものがあるんですが、んー時代は変わったんですね。
なぜベースの人気が出てきたのか?
以前はベースは地味な存在というのが大方のみなの共通の認識でした。
ギターのように主旋律を弾くわけでもなければ目立つソロがあるわけでもない。しかも低音中心なので聴こえにくい。
その結果、
「ベースって何やってるの?」
「全然聞こえないよね」
「無くてもいいんじゃないの?」
といった「ベース=いらない子」という説が一般的だったわけです。
ではなぜ「いらない子」のレッテルを貼られたはずのベースに人気が出てきたのか?
ボクが思うに、
・時代に合ったベースヒーローの登場
・再生機器の性能の向上
・フュージョンブームの到来
・スラップ奏法の誕生
・日本のビジュアル系ロックバンドの流行
・「けいおん」の秋山 澪の影響
この辺りではないかと。
時代に合ったベースヒーローの登場
地味な存在だったベースのイメージを変えたのは間違いなくベースヒーローのおかげ。
古くはビートルズのポール・マッカートニーから始まり、ジャコ・パストリアス、ラリー・グラハム、ルイス・ジョンソン、マーカス・ミラー、などなど。
それぞれスタイルは全然違いますが、多くのベーシストや音楽シーンに多大なる影響をもたらし、新たなベースの可能性を切り開いたのは間違いありません。
再生機器の性能の向上
ここでいう再生機器ってのは2つあって、一つはベースアンプ。
昔のベースアンプって本当ひどくて、とにかく
”ベーアンなんて、でっかいウーファーつけとけばいいんでしょ”
的なのが多く、モフモフボンボンいうだけで音が全然ヌケてこない。
当然スラップなどを多用する奏法に合うはずもなく不満を抱える人が続出。もっとクリアな音質を求めるニーズに応えるべく ハイファイな特性を持ったベースアンプがたくさん出てきたことによって人々は「今まで知らなかったベースの音」を知ることになったわけです。
もう一つはリスナー側の再生機器。
昔のテレビやラジオから流れてくる音楽って、大抵は低音がバッサリカットされていて、お世辞にもイイとは言えない音を聴いてたわけです。
そりゃあ低音なんてほとんど聴こえないんだから「ベース?何それ?」も当然。
でも時代とともに技術も進歩。きれいな低音が再生されるようになって初めて「お、ベースかっこいいじゃん」って皆気づきだしたわけです。
フュージョンブームの到来
私ごとで恐縮ですが、ボクも元々はギターから始めたクチです。(と言ってもフォークギターですが。。)
なので初めてバンドを組もうとしたときもギターを弾くつもりでした。
しかしその頃に流行だしたのがフュージョンというジャンル。
(当時はクロスオーバーともいってました。)
フュージョンって基本ボーカルがいないんですが、その分 演奏性がフューチャーされ、各楽器のテクニックなんかが十分に楽しめる音楽なんですね。
特にベース、何これ?今までのおとなしいイメージと全然違う!なんかよくわからんけどカッコいい!
リズミカルに繰り出されるスラップ(当時で言うチョッパー)の攻撃的な音とリズムに完全にやられてしまったのはボクだけではなかったハズ。
スラップ奏法の誕生
前記の内容と重複するんですが、やっぱりこのスラップという奏法がベースのイメージを大きく変えるきっかけになったんじゃないかと思います。
スラップって見た目も派手だけど、あのパーカッシブなサウンドが魅力なんですよね。
最初の頃は「技の一つ」みたいに思われていましたが、今ではバンドサウンドを作る上で欠かせない奏法として確立されています。
日本のビジュアル系ロックバンドの流行
日本のロックシーンでもベースがカッコイイバンドってありますよね。特にビジュアル系で。
例えばGRAYのJIRO、元XのTAIJI、BLIZARDの寺沢功一、ラルクのtetsuya、LUNA SEAのJ、etc.
こういったヴィジュアルとテクニックを兼ね備えたベーシストが、若い人たちに与えた影響力ってのは大きいと思います。
海外のアーティストだとちょっとマニアックすぎて知らないって人も多いけど、日本人のバンドはテレビの音楽番組なんかでも良く見かける分、知るきっかけも多いですしね。
「けいおん」の秋山 澪の影響
過去にバンドを題材とした漫画やアニメはたくさんありましたが、ここまでリアリティがあり、且つ親近感を感じてしまう描き方をした漫画はあまりなかった気がします。
メンバー全員 女子高生という設定も目新しいですしね。
中でもベースの秋山 澪(あきやま みお)に影響を受けてベースを選んだという女性の方も多いのではないでしょうか。
真面目でスタイル抜群。キリッとした見た目とは裏腹に恥ずかしがり屋な性格。
何か楽器を始めたいと思ってる人がこれ観たら、「ベースにしようかな」って人が2人に1人くらいいても不思議ではない、それくらい実に魅力溢れるキャラクターとして描かれてます。
レフティというところが真似し難いところではありますが、それがまた印象的でもあります。
まとめ
好き勝手に私見を書いてきましたが、いずれにせよバンド内格差がなくなってきたのは良いことです。
ギターみたいにガンガン弾くのも華があっていいけど、ベースはベースで一歩引いた感じの 静かなカッコよさっていうのがあると思いません?
ニュアンスひとつでビートを変えられるし、いざとなったら単音一発でコード感も変えられる、ちょっとした影の支配者的な。
そういうクールなかっこよさに魅力を感じてしまう人は多いですし、単純にあの低音が好きって人も結構います。
今はYouTubeとかの動画サイトを探せば いくらでもベースの演奏動画を見ることができるので、そういうのもベースの良さを知るきっかけの一つになってるんでしょうね。
いずれにしても、やりたくない楽器の代表だったベースが、ようやく市民権を得たというのは、イチベーシストとしては嬉しい限りです。
コメント
>昔のテレビやラジオから流れてくる音楽って、大抵は低音がバッサリカットされていて
そうだったんですね!知りませんでした。そりゃ、低音なんて存在そのものがどうでも良くなってしまいますよね。低音をクリアかつボリューミーに出力する、ってのが技術的に難易度が高いんでしょうね。
あと、ベースではなく、ヴォーカルやカラオケのネット記事で何度か目にした意見として、「日本人は低音が嫌い」というものがありました。だから高い声の歌手ばかりが持ち上げられるのだと。これが真実かどうか分かりませんが、もしそうなら、これもベース不人気の一因になってた(なってる?)のでしょうね。
コメントありがとうございます。
そうなんですよ、今と比べると圧倒的に低音が少なかったんです。
機械的な性能の差が要因の一つというのは理解できるんですが、そもそも低音自体があまり重要視されてなかった気がします。
「日本人は低音が嫌い」というのは初めて聞きました。確かにボーカルの高音って華がありますし もてはやされますよね。アカペラでもファルセットは目立ちますしね。
まあでも、昔に比べるとだいぶバランスがとれてきたようには感じます。
個人的にはもうすこし低音が前に出てもいいんじゃないかなぁとも思いますけどね(笑)